今年は結構な厳冬で、特に雪に悩まされている日本列島であり。
例年のこととして積雪が見られる雪国でも、
記録的な深さで積もっているとかで、
慣れておいででもその生活の上での様々に、
多大な支障が出ているとのお話で。
太平洋側の平野部や都心でも、
生活に支障を来たすほど積もった日がままあっての寒いったらなく。

　「支障を来たすと言っても、
　　北国の方々に比べれば恵まれたものですけれど。」

雪下ろしが大変なのは言うに及ばず、
家のみならず、道さえ埋まるほどの降りようだそうだし。
その雪がなかなか解けない悪循環の中、
道路は凍ってて当たり前。
ブレーキをこわごわ踏み込んで運転すると却って危ないぞ とか、
大気汚染のせいじゃなく、
横殴りの“しまき”のせいで視界ゼロなことも頻繁だ とか、
ドライバーの皆様には毎日が緊迫の日々でもあるそうな。

　「都心の場合、
　　車はチェーンさえ万全だったら問題は無かろうしな。」

都心では整備されての平坦なことが災いし、
凍結しやすい道に歩行者が四苦八苦する様子も報じられていたが、

　「今の時代は、すべりにくい底の靴も開発されてるそうですからね。」

雪山用か？と訊く勘兵衛へ、
いえいえ、スパイクとか付いてる訳じゃないんですよ これが、と。
にっこり笑ったそのまんま、

　「なんと、スケートリンクで全力疾走出来るそうですよ。」

何かそういう情報番組でも観たものか、
仔細まで知っているらしい七郎次の言へ。
いつまでも好奇心旺盛で朗らかな、
そんな彼を指しての“微笑ましいことよ”という苦笑を誤魔化すついでか、

　「受験生が競って買いそうな靴だな それは。」

精悍な口元を柔らかくたわめると、
くつくつと楽しそうに笑いつつ、
余計な茶々を入れた髭の作家せんせえだったりし。
そのお膝から、

　「にゃぁあ？」

お耳が大きく、つぶらな瞳。
モヘアのようなふわふかな毛並みをしたキャラメル色の仔猫さんが、
何だそれ？という声音で訊いて来たのが、
何ともおかしい間合いだったせいだろう。
一番間近にいた勘兵衛が
おお…とその間のよさへ苦笑を深めたのはともかく。
お向かいに座っていた敏腕秘書殿もまた、

　「…っ。」

ツボを衝かれたのを押し込めるよに、
自分の口元に白いこぶしを押し当ててうつむけば。
その視野の中、
自分のお膝にいた黒い仔猫が
これまた愛らしくも“どしたの？”というポーズ、
小さなお顔をかっくりこと傾けての、
かわいく小首を傾げて見上げて来たもんだから。
それが思わぬ不意打ちの畳み掛けになってしまったらしく、

　「〜〜〜〜〜〜vv////////」
　「七郎次。窒息するから普通に笑いなさい。」

　お言葉ですが勘兵衛様、
　笑いたいのではないんですってば。

　ならば尚更だ、呼吸不全症になってしまうぞ、と

学があるんだか、それともしっかとお馬鹿なものか。
微妙な会話を頭上で交わす大人二人を、

　「？」 「？？」

小さな家人らの二対の眼差しが
“何だろなぁ”と見上げておいで。
にゃあみゃあと愛らしい声で鳴くと、
声も糸のように か細くて愛らしいし、
そのお口の開けようがまた、
小さな小さな兎ツ口をぱかりと開く様が、

　「楽しげに笑っているよで、かわいらしいんですよねvv」
　「そうか？」

犬だと目も細めるぞ？ よほど笑っているような顔になるが…と、
勘兵衛が揚げ足を取るような意地悪を言えば。
えー、猫だって眸を細めることはありますよぉと、
いやに猫の肩をもつ七郎次であり。
お膝の仔猫の細い背中を、そおと撫でる手のやさしさへ、
思わずクロも“ぐるるる…”と鳴いて応援してみたり。

　「ねえ？ そうだよねぇ、クロちゃん。」

そんな二人の会話の
そもそもの取っ掛かりとなったらしいテレビの中では。
毛糸の帽子やむっくむくのジャンパーで重装備したお兄さんが、
今年の積雪は記録的で…と中継しておいでで。

　《 キュウ兄のとこも雪ゆき いっぱいぱいだったよね。》
　《 うん。いっぱいぱいだった。》

小さな背中をひょいと延ばし合い、
おコタの天板の縁から、よいちょと目元だけを辛うじて出して。
小さな家人同士が
無邪気にも大胆な（笑）そんな意見交換をしていようとは。
知らず気づかずにおいでの 大人様がただったりする、
都内某所、島田さんチの“猫の日”の朝一景だった。




　　　〜Ｆｉｎｅ〜　13.02.22.

　　＊猫の日なので、
　　　何かコーナー特集するかな？と思ったのですが。
　　　それこそ記録的な大雪のニュースで
　　　それどころではなかったものか。
　　　朝のバタバタの中で ながら観していた範囲では、
　　　これといった扱いはされてなかった気がします。
　　　明日は“土曜のにゃんこ”があるので そこで触れるのかな？

　　＊先日とんでもない“お出掛け”をした２匹だったことは、
　　　当然、大人たちには伝わってはおりません。
　　　クロちゃんも、
　　　自分からは まだ勘兵衛様に語ってないものと思われます。
　　　だって…ねぇ？（笑）

めーるふぉーむvv